産経リビング1995年7月8日

生の音、偶然の音と出合う喜び

ARTSPACE“O"(オー)大橋喜昭さん(52)

sankei.gifプロフィル
大学卒業後、2度の会社勤め(途中2年間アメリカに遊学)の後、45歳で脱サラ。アメリカで知り合った奥さまと2人3脚で「はためには優雅な」趣味が仕事の毎日


1階が作家モノを扱う「器の店」と「陶芸教室」2階に「ギャラリー」と「ホール」といういでたちでオープンしてから6年。「アート・スペース・オー」(町田市小川)のクラシックコンサートが、90年にスタートしてから、50回を迎えました。この仕掛け人がオーナーの大橋喜昭さん(52)です。

「オープン時は、とにかく音楽と絵と陶芸の空間を創りたかったんです」6月17日に行われ、大成功だった50回目のコンサートは、漆原朝子さん(ヴァイオリン)と吉野直子さん(ハープ)のデュオでした。安田謙一郎、堀米ゆず子、諏訪内晶子…今までのコンサートの顔ぶれをみると、そうそうたるメンバー。

出演依頼などは、どのようにしているのですか。

「コンサートなどに行って、この人と思った人に直接交渉します。最近では、逆に推薦されたりすることも…。少しずつですがここでしていることが、評価されてきているようです」

それゆえの悩みも一。

「そうですね。まだまだ日本では、コンクールで賞を取ったとか、ネームバリューのある人でないと、なかなかお客を呼べない一という現状があるんです」そういうところを打破していきたい一と、大橋さんの言葉に力がこもります。

「ここでは、私が直接聞いて納得したものしかやりません。若い才能を育てていくことも大切ですし、実際、いいものはだれが聞いてもいいはずですし…」

「とにかく、生の音を聞くことが大事。その時にしか聞けない偶然の音、というのもあるんですね。それと、100人ぐらいの小さなホールでしか味わえない音というのもあるんです。そういう楽しみを知ってほしいですね」 どこからの援助も受けないかわりに、自分のコンセプトやポリシーはあくまで押し通す-妥協だけはしたくない…そんな大橋さんの姿勢が痛いほど伝わってきます。(栗原香代子)


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